この記事では津地鎮祭訴訟事件について解説します。
日本国憲法の第20条では、国が宗教活動を行うことを禁止していて、国が宗教団体に特恵的な扱いをすることを禁止しています。
津地鎮祭訴訟は宗教活動に公金が使われたとして、起こされた行政訴訟です。
政教分離の原則については、『政教分離の原則とは?憲法20条にて制定。公明党や創価学会問題にならない?』の記事をご覧ください。
津地鎮祭訴訟事件とは?
1965年三重県津市が市立の体育館起工式を新式の儀式(地鎮祭)で行い、その費用を公金で出したたえ、住民が起こした訴訟。
地鎮祭(=ちちんさい)とは、家などの建築工事を行う際に行う儀式です。
土地を守る神様に土地を使用する許しを請い、工事の安全を祈願する儀式として昔から行われてきました。
念願のマイホームを手に入れた方などは、住宅を建てる前に神社から神主さんを呼んで、しめ縄で土地を囲い安全を祈願します。
住宅の販売業者や建築会社が地鎮祭を主催して、工事関係者が参列しますが、最近では簡易的に行われる事も多いそうです。
三重県津市の市立の体育館の起工では、この工事を安全に行う儀式のために公金(=税金)が使われました。
津市の市の職員は大市神社の宮司4人神職主宰のもとに地鎮祭を行い、市長は公金から7,663円の支出を行ったのです。
津市の住民は地鎮祭への支出は違法として訴訟を起こしました。
この行政訴訟の争点は、憲法20条の政教分離原則に違反するのではないか?という点です。

津地鎮祭訴訟の判決
第一審では習俗的行事として、原告の請求を棄却。第二審では憲法第20条の宗教的活動にあたるとしたが、最高裁1977年で住民側が逆転敗訴。
日本国憲法では第20条の政教分離の原則を規定しており、第89条では公金の支出または利用の制限について規定しています。
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
最高裁の判決では、津地鎮祭は、工事の安全を祈る儀式が神道とう宗教を促進したり援助するもんではなくて、あくまでも日本の習慣として世俗的に行われたものという判決が下されました。
つまり、地鎮祭を行ったからといって神道を促進するわけでもなければ、他の宗教を圧迫したり干渉を与えるものではないという事なのです。
そのため、地鎮祭に公金が使われたことは、憲法89条に違反するものではないという解釈です。
津地鎮祭の判決は、大きな意義があります。
それは、憲法20条における政教分離の原則と国の機関などの宗教活動とのかかわりあいについて最高裁判所が明確な基準を設けたという判例になったからです。

まとめ
この記事では津地鎮祭訴訟について解説しました。
津地鎮祭訴訟とは、三重県津市の市立体育館の建設にあたって、工事の安全を祈願した地鎮祭に公金が使われたことが争点でした。
最高裁判所は地鎮祭は習俗的行事として、津地鎮祭を認め、憲法89条に違反するものではないとしました。
憲法20条では政教分離の原則を規定しており、国による宗教の中立を定めています。
しかし、国家が宗教とのかかわりあいを一切もってはいけないという意味ではなくて、特恵的に扱うことを認めないとするものです。
地鎮祭は工事を安全に行うという儀式や習慣で古くから行われており、神道を促進したり他の宗教を圧迫するものではないという最高裁判所の判決でした。