この記事では自然法と実定法の違いを解説します。
市民革命以降、自由権などの人権概念の広がりと共に法の体系も確立してきました。
法、道徳、慣習をひっくるめて「社会規範」と言いますが、その中の法にはいくつかの方法で分類されています。
今回の内容は自然法と実定法という分類についてです。
自然法とは?
人が生まれながらに持っている権利、自然権を前提に成立している法。
自然権は法律や制度、国家が誕生する以前から生まれながらに人間が持っている権利を言います。
法律は人が作るものと考えてしまうかもしれませんが、
例えば、「人を殺してはいけない」「産んだ子供を育てる義務がある」といったような人間が生まれながらに持っている当たり前のルールが存在します。
「人を殺してはいけない」誰もが調承知している事ですが、法律にはそんな規定はありません。
「殺人は懲役、無期、または死刑」と刑法には規定されていますが、人を殺したら罰すると書いてあるだけなのです。
つまり、罰を受け入れられるならば殺人は犯しても良いという事になってしまいます。
でも、普通の人はしませんよね?それは自然権に基づいているのです。
自然法の父グロティウス(1583-1645年)は、「人間は生まれながらに自由であり、故に自由や生命・財産を奪うことは誰もできない」としました。

実定法とは?
特定の社会で実際に効力がある、人為的に発生した法
人が生まれながらにして持つ自然権に基づくと考えられている自然法の対比として実定法があります。
イギリスの権利章典、アメリカの合衆国憲法、フランスの人権宣言のように国家が成立した後に発生して、
特定の社会で実際に効力があるのが実定法なのです。
特定の社会には特定の慣習があり、慣習から成り立った慣習法や裁判所の判例の先例を参考にした判例法も実定法の一種です。
国家が成立して市民社会が発展すると、裁判官は裁判をする際に拠り所とする法規範が必要となります。
それは市民が受ける人権侵害だったり、市民間の争いごとなどの問題解決をするために必ず必要なものです。

成文法と不文法に関しては、『成文法と不文法とは?イギリスはコモンロー(慣習法)の国』の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では自然法と実定法について解説しました。
実定法は慣習や立法機関による制定で、人間の行為によって特定の社会にて作り出されますが、
自然法の上に実定法が作られています。