この記事では社会主義について解説します。
18世紀後半にイギリスで産業革命が起こり、資本家と労働者という構造に分かれる資本主義が発達していきました。
資本主義では政府はなるべく経済に介入せずに、できるだけ市場に任せます。
企業は利益を追求して競争を行い、商品の価格が安くなったり、より良い物ができたりと当然プラスの面もありました。
しかし、貧富の差が拡大したり、労働者は長時間労働などの労働環境が悪かったり、景気変動が起きたりと
資本主義にもマイナスの側面がありました。
そこで誕生したのが社会主義という思想です。
社会主義とは?
資本主義を批判して、生産手段の社会的所有に基づいて人間の平等を可能にする未来社会の建設を目指す理論と運動のこと。
社会主義は簡単に言えば、労働者のみの平等な社会を築く理論と運動です。
社会主義という言葉は、1832年にピエール・ルルーが個人主義という言葉の対比として社会主義という言葉を用いた説や、
1827年のシモンが社会主義という言葉を用いたという説があります。
いずれもフランスで最初に使われた言葉で、個人主義や自由主義を基本原理とした資本主義の対義語として使われ始めました。
イギリスやフランスは市民革命を経験して基本的人権や自由主義を獲得しましたが、
経済が自由化するにつれて、一部の資本家と大多数の労働者と対立構造が作られます。
資本家は手にした資本をさらに蓄積したり、投資する事でさらなる利益を上げることができます。
しかし、労働者は生産手段を持たないので、冨を蓄積する資本家に雇われて賃金を得ることになります。
つまり、労働者は「自分の労働力」を商品として売るしか手段がないのです。
このような資本主義経済の矛盾を指摘して、労働者の視点で社会問題を解決しようとした考えが社会主義なのです。

社会主義の歴史
ここでは社会主義を4つの時代に分けて説明します。
〇初期社会主義
ロバート=オーエン、サン=シモン、フーリエなどは18世紀後半の産業革命やフランス革命時に初期社会主義者として誕生しました。
キリスト教人道主義の立場から貧困者を救済する考えや、土地は万人のものという思想、国家を否定して自給自足の社会を実現する思想など、
社会主義的な思想が育った時代です。
〇マルクス主義
カールマルクスとエンゲルスは1848年に『共産党宣言』を執筆しました。
資本主義経済が発達すると労働者と資本家により階級闘争が激しくなる事や恐慌や失業などの社会問題を指摘して、マルクス経済学という理論を体系化しました。
マルクスの思想はヨーロッパ全土で大きな影響を及ぼしました。
議会政治が発達すると多数を占める労働者が政治の場で発言力を強める事となり、
1871年には一時的ではありましたが、パリで社会主義政権が誕生しました。
ドイツではビスマルクが世界初の社会保険を導入したり、社会保障の基礎ともなりました。
〇ロシア革命以降
ロシアでは1917年にロシア革命が起きました。
イギリス、フランス、アメリカなどの資本主義の国では独占資本主義経済が起きて、
他国を植民地化していく帝国主義へと発展していました。レーニンはそういった資本主義国の強欲さを痛烈に批判していました。
レーニンの死後、スターリンは秘密警察や粛正により暴力で反対勢力を次々と排除していきました。
スターリン個人に対する崇拝を強めて、戦争は避けられないという思想を展開しました。
〇第二次世界大戦以降
第二次世界大戦以降はソ連に占領された国を中心に次々と社会主義国家が誕生しました。
社会主義国家が参加する国際機関のコミンフォルムも誕生しました。
中国はソ連とは少し距離置きつつも社会主義政権を誕生させます。
社会主義国家は財産の国有化や計画経済、教育の無償化などの政策も進め、一時期は資本主義陣営よりも優れているようにも思えました。
1960年代以降は中国の毛沢東の反戦キャンペーンと相まって、社会主義運動が過熱します。
しかし、1980年代後半になるとソ連と東側陣営の国が崩壊して社会主義国家の存在感は無くなっていきます。

まとめ
この記事では社会主義について解説しました。
社会主義とは資本主義の問題点を批判することで誕生した主義です。
財産や生産手段は共有されて、経済は政府により計画経済が行われます。
当初は自由主義や資本主義の批判から始まりましたが、独裁政権が過熱すると暴力や他者の排除などの問題点も露呈します。
冷戦が終わりソ連が崩壊すると社会主義の存在は下火になってしまいました。
資本主義経済と社会主義経済の違いについては以下の記事をご覧ください。