この記事ではマルクスの資本論について解説します。
マルクスはドイツの経済学者とともに社会主義を確立しました。
それまでの理屈だけであった初期の空想的社会主義と対比して、科学的社会主義であるマルクス主義は
歴史的にも科学的にも社会主義を構築して20世紀の経済に大きな影響を及ぼしました。
マルクスは社会主義に科学的な基礎を与えたとする本、『資本論』を執筆しました。
マルクスのマルクス主義に関しては『マルクス主義とは?わかりやすく解説。科学的社会主義が確立される。』の記事をご覧ください。
マルクスの『資本論』とは?
それまでの経済学を批判的に考察して、資本主義的生産様式、剰余価値の生成過程、資本の運動諸法則を明らかにした本。
マルクスは『資本論』の中で資本主義経済の構造を科学的に分析しました。
資本主義経済の構造を分析することで、社会主義社会への必然性を論じたのです。
マルクスは貧困と分配の問題を取り上げ、資本家階級は労働者階級が生産したもののうち、
労働者に支払った賃金以上の価値を獲得していることを明らかにして、資本主義的生産の特徴を明確にしました。
マルクスが『資本論』で明らかにしようとした経済学、マルクス経済学です。
資本論は全3巻からなっており、マルクスは1巻を執筆した後に亡くなってしまいました。
エンゲルスはマルクスの『資本論』執筆に物心両面の援助を与え、『資本論』の第2巻と第3巻はマルクスの遺稿をもとにして、エンゲルスが編集しました。
マルクスの『資本論』の大まかな内容を解説します。
商品の使用価値と交換価値
マルクスは資本主義経済では、商品が冨であり社会の冨は巨大な富の集合体であると考えました。
つまり、商品を理解する事からはじめたのです。
巨大な資本主義経済を構成する商品の集まりから、まずは最小単位で商品そのものを考察したわけです。
マルクスは商品には2つの価値があると考えました。
〇使用価値
実際に使用することに価値があるもの。
例えば、包丁は毎日の料理を作るのに使用できますし、水は飲んだり料理をするのに使え、実際の使用価値があります。
一方、ダイヤモンドや絵画などはそれ自体を使って何かをすることができないため使用価値はありません。
〇交換価値
他の商品と交換するための価値があるもの。
例えばフライパン1つと、お米3か月分を交換するといった事です。この例ではフライパンはたくさんのお米と交換する事ができるので、交換価値が高いと言えます。
使用価値が異なるからこそ、交換価値が生まれます。
貨幣(ゴールド)の性質
商品には他のモノと交換できる交換価値があると説明しました。
しかし、物と物の物々交換であると交換の比率が人によって異なってしまいますので、「どんなものにでも交換できる」貨幣が登場します。
貨幣は商品とは異なり、腐ったり価値がなくなったりしないので、とても便利なものでした。
商品の価値を貨幣で表したものが「価格」です。
ある商品の価格は人々が欲しいという気持ちである需要と、人々が売りたいという気持ちである供給によって変動します。
つまり、価値とは離れて価格が変動することもあります。
〇交換のための貨幣
貨幣には交換するための役割があります。
例えば仕事として洋服を作っているとします。食材を「買うために売る」、洋服を売って貨幣を手に入れます。
手に入れた貨幣で食材を購入します。これは洋服と食材を交換するために貨幣を利用しているということです。
商品→貨幣→商品
〇資本としての貨幣
交換のための貨幣に対して、資本としての貨幣の役割があります。
これは「売るために買う」という事です。
例えば、1,000円の化粧品を購入して、ネットで1,500円で売るといった事です。売るために化粧品を購入して貨幣を使い、より多くの貨幣を得ることができました。
資本を蓄積するための貨幣です。
貨幣→商品→貨幣
これが最初の資本の概念です。
資本を理解するためには商品を理解しなければならなくて、交換価値のあるものを使って貨幣を増やしていくのが資本主義の始まりだったのです。
つまり、お金を使ってお金を増やすという事です。
資本を理解するためには、商品とは何か?価値とは何か?を理論的に理解することが必要でした。
マルクスの『資本論』は商品と価値と貨幣から始まっています。

剰余価値について
マルクスによると、労働者の労働力もまた商品であると考えました。
例えば、ある労働者の賃金が1か月20万円であれば、労働者は資本家に20万円分の労働力を売っているという事になります。
例えば、ある工場で1人の労働者が10万本のネジを作りました。
この労働者は10万本のネジを作るという労働力を資本家に売っているわけです。
仮に資本家が10万本のネジを20万円でしか売ることができなければ、会社は儲けが出ませんし、それ以下であれば会社は倒産してしまいます。
そこで資本家は労働者を多めに働かせて、「剰余価値」を生み出します。
つまり、ネジの例で言えば、資本家は20万円を労働者に支払いますが、10万本のネジが30万円や40万円で売れるという事です。
マルクスは資本主義経済下での資本家のこれらの行動を「搾取」と呼びました。
資本家は労働者が働いて得たものを労働者にすべて渡さないで、生産手段の所有者である資本家が一部を取得しています。
そして、資本家は差分の「剰余価値」を最大化することが目的だともしています。
マルクスは労働者は労働力商品以外に売るものがない無産階級だと定義しました。
資本家は労働者から搾取して剰余価値を作り出し、資本を無限に蓄積していくものと考えられました。

自由競争は独占へとつながる
資本家は労働者から「剰余価値」を搾取して、資本を蓄積していきます。
貯め込んだ資本を自分の消費のために使うのではなく、さらなる労働力の購入に充てることで拡大再生産を行うことができます。
つまり雪だるま式に資本を蓄積していくということです。
これらの経済が成立するためには、国家が経済に介入することなく自由主義政策が必要となりますが、
自由主義は独占資本主義へと繋がります。
自由競争により負けた企業は、より大きな企業に吸収されることになり、
最も効率よく生産できる企業がけが生き残り独占資本主義の形になるのです。
19世紀のヨーロッパでは銀行や大企業による独占が起きました。
マルクスはこの独占の構造により資本家と労働者の格差がさらに拡大すると考えました。
独占資本主義に関しては『独占資本主義とは?わかりやすく解説。年代は19世紀末のイギリスから』の記事をご覧ください。
ここまでがマルクスの『資本論』の第1巻の内容となります。
第1巻では資本の生産過程の研究がされました。
第2巻と第3巻に関してはエンゲルスがマルクスの内容をより深堀した内容となっています。

まとめ
この記事ではマルクスの『資本論』について解説しました。
マルクスは『資本論』の中でまずは商品の価値と貨幣について解説しました。
そして資本家は労働者から剰余価値を搾取して、さらに資本を蓄積していくという問題点を指摘しました。
資本の蓄積は独占を生み出し、独占によりさらに貧富の差が拡大すると主張したのです。
マルクスは『資本論』にて資本主義を科学的に分析することで、社会主義への必然性を論じたのです。
社会主義については以下の記事をご覧ください。