この記事では硬性憲法について解説します。
戦後、日本国憲法が制定されてから70年以上一度も憲法は改正されていません。
2013年頃に安倍政権は憲法を改正するための手続きに関する条文、憲法96条を改憲すべきと話していました。
それまでの議員の3分の2以上の賛成で発議から過半数に変更すべきという内容でした。
安倍政権の言い分としては、世界中見渡しても憲法を改正するための手続きがこれほど厳格なのは日本くらいだという主張だったのです。
通常の法律改正手続きよりも、憲法の改正を厳しくしている憲法、硬性憲法について解説します。
硬性憲法とは?
憲法が国家の基本法として、法律よりも上位の法に位置付けられている、改正要件が法律の改正よりも厳しい憲法
硬性憲法では憲法改正にあたって、複雑で困難な手続きを必要とする規定になっています。
憲法改正にあたって厳格な改正手続きを定める理由は革命やクーデターなどの非合法な手段で、憲法改正をされてしまう恐れを防ぐというメリットがあります。
憲法改正までに適切な手続きを設けていれば、重要な変更に関しては憲法改正の手続きは適切に行われるからです。
また、憲法にはそもそも「国家権力」に対して歯止めをきかせるための機能があり、
簡単な手続きで憲法を改正できてしまっては、権力の行使の行き過ぎが起きてしまうため、改正要件を厳しくしているという理由もあります。
今日のほとんどの成文憲法を持っている国は、ほとんど硬性憲法となっています。
日本は戦後1度も憲法改正をしていませんが、ドイツやフランスは何十回も憲法改正がされています。
成文法と不文法の違いに関しては、『成文法と不文法とは?イギリスはコモンロー(慣習法)の国』の記事をご覧ください。

軟性憲法とは?
法律と同じ手続きで憲法を改正できる憲法
軟性憲法の国として、イギリス、イスラエル、ニュージーランド、タイがあります。
イギリスは成文憲法を持たず、慣習法と言い、それまでの人々の社会生活から築き上げたルールや過去の判例を利用しています。
硬性憲法と軟性憲法には明確な線引きがあるわけではありませんが、
軟性憲法の場合は、厳格な手続きというよりは社会的、経済的勢力の支えにより成立することもあります。
軟性憲法が成立ためには、多くの国民が政治に関心をもちつつも、国の重要な意思決定は少数の正しい知識者に委託するという社会の気概が存在しなければなりません。
つまり、人々が政治に関心を持ち、正しく選挙で選ばれた議員に委ねる文化的背景が必要です。

まとめ
この記事では硬性憲法について解説しました。
硬性憲法とは法律の改正よりも改正要件の厳しい憲法の事を言います。
2013年の安倍政権では日本は諸外国に比べて憲法改正までの手続きが厳しくて、なかなか憲法改正が行われないという主張もありましたが、同じ硬性憲法を持つドイツでは戦後59回の憲法改正が行われました。
憲法改正の手続きも日本と比べて同じくらいの厳格さかと言われています。
日本では戦後一貫して、憲法改正の議論が憲法9条の改正によるもので、平和主義という日本国憲法の特徴の1つでもある内容の改正ですから、そう簡単には憲法改正に進まなかったという背景もあるでしょう。
憲法9条の改正に関しては、『憲法9条とは?わかりやすく解説。改正や自衛隊の解釈について。』の記事をご覧ください。