この記事では憲法研究会の憲法草案要綱について解説します。
ポツダム宣言の受諾により、日本は民主化や基本的人権の尊重が求められました。
民主化や基本的人権の尊重を実現するためには必然的に憲法改正が必要でしたが、
官では憲法問題調査委員会が発足され、委員長の松本烝治は「松本試案」をGHQに提出しました。
一方の民でも憲法の草案を作成するために、憲法研究会が発足しました。
憲法問題調査委員会に関しては、『憲法問題調査委員会と松本烝治による松本試案とは?国体護持は受け入れられず』の記事をご覧ください。
憲法研究会とは?
学者、知識人などを中心とする民間の憲法改正のための研究会
憲法研究会は1945年10月に高野岩三郎の提案により発足しました。
高野岩三郎は東京大学の経済学部の教授を務めていた人物です。
主な目的は憲法制定の準備や研究を目的とされました。
鈴木安蔵が事務局を務めて、第1案~第3案を1945年12月に内閣へ届け記者団に発表しました。
これが「憲法草案要綱」です。
憲法草案要綱はフランス憲法、アメリカ合衆国憲法、ソ連憲法などを参考に作成されました。
主権は国民にあり、天皇は「国家的儀礼ヲ司ル」として天皇の存続を認めました。
基本的人権に関しても法律の留保ではなく、社会権、生存権が規定されています。
憲法研究会がGHQに提出した憲法草案要綱にはGHQも強い関心を寄せて翻訳を作成して、検討に当たりました。
憲法問題調査委員会が提出した松本試案では主権が天皇にあり、
民主化には不徹底な内容であったものから、マッカーサーはGHQ民政局に改正案の作成を指示しましたが、
民間の憲法研究会が提出した憲法草案要綱はおのGHQ作成の草案に大きな影響を与えました。

まとめ
この記事では憲法研究会の憲法草案要綱について解説しました。
憲法草案要綱とは民間の憲法研究会がGHQに提出した憲法の草案です。
政府が提出した松本試案は民主化が徹底されているものとは到底言えなかったため、
GHQは自ら憲法改正案の作成に乗り出しますが、民間の草案はGHQの草案作成に大きな影響を与えました。
余談にはなりますが、憲法研究会を発足させた高野岩三郎は
象徴ながらも天皇制を残した事には反対していました。天皇制廃止を主張していた人物なのです。
高野岩三郎は大統領制の導入と土地の国有化などを柱とした日本共和国憲法私案要綱という独自案を11月に発表しています。
各国の憲法を参考にした高野独自の憲法案でした。
高野は1946年にNHKの会長に就任しています。
アメリカ合衆国憲法に関しては以下の記事をご覧ください。