この記事では人権について解説します。
人権とはわかりやすく一言で言えば、「人間が生まれながらに持っている権利」ですが、人権の内容は社会の変化につれて多様化しています。
現代の私達が当たり前のように受けている教育は社会権に属しますが、かつての世界では社会権というものは定義されていませんでした。
社会権が憲法で定義されたのは、たった100年前の事なのです。
この記事では人権の内容と、基本的人権の歴史的展開について解説します。
基本的人権とは?
自由の中で最も基本的であり、だれもが生まれながらにして持つ権利。
人権とは、人間が人間らしく生きる権利の事でそれぞれの幸福を追求する権利とも言えます。
人権の歴史的展開に関しては、
18世紀 → 自由権 → 国家からの自由
19世紀 → 参政権 → 国家への自由
20世紀 → 社会権 → 国家による自由
と定義できるでしょう。
1700年代の18世紀の人権の主な概念を自由権といいます。
これは国家ができるだけ個人に介入しない、国家の不介入を求める人権です。この意味で「国家からの自由」と表現しています。
当時のヨーロッパでは絶対王政の下、国王が神に与えられた権利として法を制定する事が可能で、国王が法を自由に利用して国民を支配していました。
これを「人の支配」と言います。
国王が統治する国の支配から逃れるために国民は市民革命を起こして、自分たちの自由を手に入れました。
そうしてできあった政治制度が民主主義であり、民主主義には人権の尊重という基本原則があります。
自由とは?
自由とは一般的に拘束の無い状態のことを言います。政治的には個人が他の個人や集団から制約されることなく、自分の意思に従って行動できる事を指します。
自由主義や民主主義の基本原理であり、フランス人権宣言第4条では「自由は、他人を害しないすべてを成し得ることに存する」と述べていて、
他人に迷惑を掛けない限り自由であるという事です。
1,800年代の19世紀の人権の主な概念は参政権です。
参政権とは選挙に参加する事で、イギリスのチャーチスト運動により、労働者が参政権要求運動を始めたことに始まっています。
日本では1925年に普通選挙法が制定されました。
参政権
参政権とは選挙に参加する事ですが、自分で立候補したり、候補者に投票したりできる権利です。
憲法を改正する時も国民が投票する国民投票の権利なども参政権に当たります。
1,900年代の20世紀の人権の主な概念は社会権です。
19世紀以降、産業革命により工業化が進み、世界中で貧富の差が拡大しました。
一部の資本家と多数の労働者によって社会が成り立っており、資本家は労働者に重い労働を強いるようになっていました。
この状態を放っておいたら、労働者の権利は保障されません。
そこで、生まれたのが社会権という権利で、国家の個人に一部介入をしてこの社会的な不平等をなくそうと考えたわけです。
国家の介入という点で「国家による自由」と定義できます。
社会権を世界で初めて規定したのが1919年ドイツのワイマール憲法です。
社会権
日本国憲法では社会権として、「生存権」「教育を受ける権利」「勤労権」が保障されています。

第二次世界大戦後の世界的な人権保障の取り組み
1945年に終戦した、第二次世界大戦ごには人権を国単位ではなく世界的に認めようとする動きが出てきます。
これを人権の国際化と言います。
ヨーロッパの国々やアメリカはアジアやアフリカに植民地を所有していました。
ヨーロッパ人やアメリカ人はアジア人やアフリカ人を奴隷として重労働させたり、時には人に道に外れる酷い事をしていました。
そういった過去の反省から、国家レベルでの人権保障ではなく、国際連合を中心に世界全体としての人権保障へと移り変わっていったのです。
アフリカの年
1960年にはアフリカの国々が次々とヨーロッパの国から独立しました。カメルーンやコンゴなどの国も1960年に独立国になり、一気に26か国が独立しました。
1948年世界人権宣言
1948年の第3回国際連合総会にて世界人権宣言を宣言しました。
しかし、こちらはただの宣言であって、法的拘束力はありませんでした。『人権を守りましょう』というものだったのです。
1966年国際人権規約
1966年の第21回国際連合総会にて、法的な拘束力がある国際条約が採択されました。
実際に発行されたのは10年後の1976年です。
国際人権規約にはA規約(社会権的内容)とB規約(自由権的内容)、そしてそれぞれの選択議定書から構成されています。

まとめ
この記事では基本的人権について解説しました。
基本的人権とは、人が生まれながらにしてもつ権利ですが、歴史を振り返ってみると
国民の努力によって手に入れて権利だとも言えるでしょう。
今、私達が当たり前のように持っている権利は100年前の人達から見るととても幸せな権利なのでしょうね。