この記事では香港人権法案について解説します。
香港のデモ活動が激化しています。デモ活動というよりも、民主化を求める民衆と警察の内戦のようになってしまっており各国が関心を寄せています。
貿易問題で中国と対立関係にあるアメリカは2019年11月27日に香港人権法案に署名をしました。
アメリカが香港人権法案に署名した事により、アメリカから中国に対する「宣戦布告」にも見え、米中は「臨戦態勢」とも考えられています。
これによりアメリカは香港の問題に対して政治的にも明確なスタンスを取ったと言えます。
この記事では香港人権法案の内容と影響について解説します。
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香港人権法案とは?
アメリカが香港のデモ激化に対して、香港政府をけん制するために2019年6月13日に出された法案
アメリカでは1992年の段階で「米国-香港政策法」が議会を通過しました。香港人権法案は米国-香港政策法の流れを汲む法案となっています。
「米国-香港政策法」は1997年に香港が中国に返還されると同時に効力を持ちました。
中国は香港が独立する際に「今後50年に渡って高度な自治を認める」として、アメリカも自治機能を持った香港との接し方について法律を作ったというわけです。
米国-香港政策法の目的は、
それまでイギリスの植民地化にあり経済的に自由で中国の特別行政区である香港に対するアメリカの扱い方
を制定した法律です。
つまり、特別な都市である香港をアメリカがどう扱うかというもの。
1つの国に2つの制度がある「一国二制度」に対してアメリカのスタンスを明確にする法律となっており、「一国二制度」がちゃんと機能しているのかアメリカは毎年検証しています。
香港人権法案はアメリカの議会の上院、下院で反対票はわずか1票で通過しました。
仮にトランプ大統領が拒否権を発動して、法案に署名をしなかたったとしても上下院で多数の賛成を得た法案のため、議会が大統領の判断を覆す可能性もありました。
香港人権法案の内容には3つの骨子があります。
1、年1回アメリカが香港に与える通商上のレビュー
前述した通り、アメリカは1997年の香港独立時に中国とは制度の違い「一国二制度」を取る事に対して、中国と香港では違ったスタンスで接しています。
通商とは外国と商取引すること、つまり貿易のことで、アメリカは香港に通商上の優遇を与えています。
なぜなら香港は経済的にも自由であり特別行政区となっているからです。
このアメリカが香港に与える優遇措置が妥当であるかどうかのレビューを年1回行うというのが、骨子の1つ目です。

2、人権侵害の責任者に対する制裁
香港では警察とデモ隊との攻防が続いています。
デモは暴徒と化していますが、同様に警察も不当に逮捕をしたり、関係の無い人に武力行使をしたりなど人権が著しく侵害されているという報告が上がっています。
こうした人権侵害を行った責任者に対して、
・米国に出入りができないようにする
・資産の凍結
などの制裁が設けられます。
またアメリカ側は香港の特定の書店やジャーナリストに対して、監視、拉致、拘禁、自白強要などを行った責任者を明らかにすることしています。

3、香港警察へのデモ制圧用品の輸出禁止
今回の香港人権法案では、トランプ大統領は香港警察への催涙ガスや催涙スプレー、ゴム弾、スタンガンなど特定の軍用品を輸出することを禁じる法案にも署名をしました。
アメリカにとっては香港はモノの貿易黒字額は311億ドルとなっており、国や地域別でも最大の貿易相手となっています。
今度は香港政府がデモの制圧に使う用品をアメリカから香港に輸出できないようにするになります。

香港人権法案に対する中国の反応
イギリスのBBCはアメリカの香港人権法案に対して中国は強く反発していると報道しました。
アメリカが香港人権法案に署名をしたという事は、アメリカは香港市民の民主化の運動を支持するという事なので、中国外務省は声明で「アメリカ政府による悪意のある内政干渉だとして、断固拒否する」と発表しました。
内政干渉とは?
国家は国際法に反しない限り自国の事項に対して、自由に処理することができる権利を持っている。つまり、自国のことは自国で行う権利がある。もし別の国が自国の政治や事項に対して口出ししたり行動を行い場合は、内政干渉として国際法上違反であるという事。
中国の国営メディアは、「不必要で根拠を欠き、香港とアメリカの交流を損なう」と放送しました。
一方の香港政府はアメリカの法案に関しては、香港の現状の事態緩和には役に立つものではないとして、強く非難しました。

まとめ
この記事では香港人権法案について解説しました。
香港人権法案は1992年に議会を通過して1997年に効力を持った、「米国-香港政策法」の流れを組む法律となっています。
中国と香港という1つの国に2つの制度があるという状況に対して、アメリカが香港とどのように接するかという事を定めたものです。
香港人権法案は3つの骨子からなっており、アメリカの上下院にて圧倒的多数で通過しました。
トランプ大統領が署名したことにして、中国側は激しい反発をしています。
■11/29追記
香港島では香港人権法案が成立したことを歓迎する集会が開かれて、数千人の市民が参加したアメリカ国旗を掲げました。
香港人としてはアメリカが市民側に立ったことに対して喜びを表現しています。
そもそもの香港デモに関しては以下の記事をご覧ください。
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