この記事では緊急法と覆面禁止法について解説します。
香港のデモが過激化しており、18歳の高校生が警察から至近距離で発砲されて重傷となったり、
インドネシアの記者がデモ現場を取材している最中に警察のゴム弾に撃たれ右目を失明したりと悲惨な状況が続いています。
10/4、香港政府は緊急法にて、覆面禁止法を成立させました。
緊急法は議会の立法を回避して直接法律を制定する事ができるため、香港のデモを鎮圧するためにどんな法律でも作られてしまうと懸念されています。
今回は、この緊急法と覆面禁止法について解説します。
香港デモの理由に関しては、『香港デモの理由をわかりやすく解説。なぜデモが長引いているのか?』の記事をご覧ください。
緊急法(緊急状況規則条例)とは?
英国の植民地時代1922年にできた行政長官が緊急事態を判断すれば、集会や通信の制限を含むあらゆる規則を制定できる条例
香港の緊急法は、行政長官の判断があれば、行政長官の権限であらゆる規則を適用できる条例です。
今回の香港のデモでは若者たちを中心に個人を特定されないために、覆面をかぶりデモ活動をしている人達が増えました。
覆面をかぶり個人が特定されない安心感から、火をつけたり、物を破壊したりと
過激な抗議活動につなげっているとされていました。
香港の行政長官は記者会見を通じて、緊急法の発動を発表して、10/5から覆面を被ってでも 活動をした人に対して、約34万円の罰金を科すことが出来ます。
法律として制定されたので警察の取り締まりもより厳しくなること予想されています。
今回、緊急法が発動されたのは、1967年のイギリス統治に対する暴動が起きた52年ぶりとなっています。
つまり、香港がイギリスから返還されてからはじめての出来事となりました。
緊急法は緊急時に行政長官が公共の利益のために発動できる法律のため、滅多に発動される事はありません。
しかし、今回のデモの性質が「香港の民主化」を求めるデモあるために、
立法のプロセスをすっ飛ばして法律を発動できる民主政治とはかけ離れた緊急法の発動は、より市民団体の反発を買うことになるでしょう。
民主派の団体は緊急法は植民地時代の悪法と考えており、行政機関が権力の濫用して市民を迫害していると激しく非難しています。

そもそも覆面禁止法とは?
覆面禁止法は香港だけではなく、他の国でもあります。
有名なのはオーストリアで、2017年10月1日から「顔が見えないほど覆った場合」罰金の対象となっています。
もし警察官の指示に従わずにその場で覆面を取らない場合は、
最寄りの警察署まで連行され150ユーロ以下の罰金となっています。
日本では風邪予防のためにマスクを着用する事が一般的ですが、
日本からオーストリアの旅行者にマスクの着用について気を付けるように指示があったことで話題になりました。

まとめ
この記事では緊急法にて制定された覆面禁止法について解説しました。
香港政府はこれ以上暴力がエスカレートしないように緊急法を発動して覆面禁止法を制定しました。
行政機関が国家の非常事態の時にすぐに制定できるというのが緊急法の性質ですが、一見、香港政府の行動は正しいようにも思えます。
しかし、今回の香港のデモが「民主化」を求めて人々はデモを起こしているので、
民主化とは程遠い緊急法の発動という出来事に対して、香港市民はどのように捉えるのでしょうか。
今後、夜間の外出が禁止されたりインターネットの利用まで厳しく制限されることは香港市民は恐れています。
デモの鎮静化までにはまだまだ時間がかかりそうです。
■11/30追記
香港の高等法院は覆面禁止法は香港基本法(憲法に相当)に違反するという判断をしました。
10月に緊急条例により制定された覆面禁止法は香港の高等法院は、「基本的人権の範囲を超えている」という判断を下したのです。
司法権の独立に関しては中国本土ではありえない事であると同時に香港市民にとって、司法権の独立の重要性を示す出来事となりました。
11//28には高等法院は覆面禁止法に基づく取り締まりを12月10日まで認めることを決定しています。
もともとは11/22の段階で11/29という期限付きだったのですが、香港政府からの圧力により12月10日まで延長という事になったのです。