この記事では人の支配と法の支配と法治主義の違いを解説します。
2019年3月6日の参議院予算委員会の質疑にて、小西議員が安倍首相に
『総理は法の支配と言いますが~法の支配の対義語はご存知ですか?』
という質問をして、「人の支配」と答えられなかったという事が話題になりました。
結論としては、阿部首相は国内社会ではなく国際社会においての話をしていたんので、無知を晒したのは小西議員という事だったのです。
この記事では人の支配と法の支配、そして法治主義の違いを再度まとめます。
法の支配と法治主義の違いに関しての詳しい解説は、『法の支配と法治主義の違いを解説。実質的法治主義と形式的法治主義とは?』をご覧ください。
人の支配と法の支配と法治主義
人の支配は、君主・独裁者などの支配者が法に超越して行う政治の事で、恣意的に法を制定する事が可能な政治対体系です。
絶対王政下の典型的な政治体制で、「法の支配」の対比としてよく使われます。
法の支配は、法によって国民の自由・権利を守るという考え方で法の制定は国民によって行われます。
イギリスで発展した考え方でたとえ、国家権力や君主であっても法によって支配を受けるという考え方です。そして、法は自然法であり基本的人権を尊重するものでなくてはなりません。
法治主義は、法の中身は問わず、法を遵守することのみを強調する立場です。
ドイツで発達した考え方で、時に悪法であっても法は守らなければならないという立場にもなってしまいます。
今日では法はまもらなければならないという遵法の精神の意味でも使われています。
法治主義の原則を取り入れている国を法治国家と呼びます。

ブラクトンとエドワード=コーク
人の支配の典型的な例は絶対王政下の王や貴族です。
王権神授説では国法の支配権は神から授けられたものであり、その権力は法に拘束されてないという考え方です。
その「人の支配」に問題提起をしたのが、13世紀のイギリスの裁判官ブラクトンです。
裁判官のブラクトンは『国王と言えども神の法のもとにある』と発言して、のちのイギリスの法律家エドワード=コーク(1552~1634年)に影響を与えました。
エリザベス1世のあとを継いだイングランド国王ジェームズ1世は王権神授説を信奉していてしばしば議会と衝突しました。
エドワード=コークはジェームズ1世に対して、コモンローの優位を主張して、権利請願をしたのです。
コモン=ロー
イギリスにおける中世以来の慣習法。人権保障を基礎としていて、イギリスにおける法の支配の源流となった。
こうして、イギリスでは自然法に基づいた法を遵守する「法の支配」が発展していきました。

法治主義の発達
法治主義はドイツで発達しました。
「法の支配」が自然法に基づき基本的人権を尊重しているのに対して、法治主義は法の中身自体までは問いません。
法治主義では形式や手続きの適法性が重視されていて、時に悪法も法なりという事が起きてしまいます。
かつて、ドイツのヒトラーはワイマール憲法を否定して、分に全権を委任する「全権委任法」を制定してしまいました。
その結果、法の手続きを踏めば、人権を無視してよいという事が起きてしまったのです。

まとめ
この記事では人の支配、法の支配、法治主義について解説しました。
基本的人権を尊重する自然法に基づく法の支配と、法の中身は問わず形式や手続きの適法性が重視される法治主義。
人の支配は主に法の支配の対比として使われるという事を覚えておきましょう。