この記事では独裁政治について解説します。
議院内閣制や大統領制の政治体制では権力が分立していることを解説しました。
立法、司法、行政の権力が分立する事でお互いの機関がバランスを取り合い権力の行き過ぎを抑える効果があります。
しかし、戦争や社会の混乱期に権力が1つあるいは1個人に集中する独裁政治という政治体制が生まれてしまうことがあるのです。
それはナチスのヒトラーやクロムウェルの独裁、プロレタリア独裁など歴史を見れば例は多数ありますが、
そもそも独裁政治とは何か?について解説していきます。
独裁政治とは?
個人または特定の集団や階級が、国家権力を独裁して政治を行うこと
独裁政治の言葉の由来は、古代ローマにおいて戦争などの有事の際に法的手続きを簡略化するために独裁官に権力を集中させた事から始まりました。
一般的には社会の過渡期に一時的に現れる政治体制です。
君主制との違いは、君主制は世襲を伴うに対して、独裁政治では必ずしも世襲を伴うものではありません。
国王は〇〇1世、〇〇2世とった具合に世襲になりますが、
独裁政治では、統治者と被統治者の身分は基本的に同じなのです。
歴史を見ると、ナチスのヒトラー、クロムウェルの独裁、プロレタリア独裁などがあります。
現代でも、サウジアラビア、カタール、シンガポール、北朝鮮、ラオス、中国、ベトナムなども独裁政治を取っています。
民主主義や社会主義は関係なく、独裁政治の政治体制を取れるのです。
例えば、ナチスのヒトラーも選挙で当選して民主憲法に則り独裁化しました。これは法治主義の結果とも言えるでしょう。
軍事独裁という軍人が政治権力を奪い、軍部の力を背景に政治を強制的に支配する体制も中東、アフリカ、ラテンアメリカなどにみられます。
クーデターによって成立することが多々あります。

独裁政治のメリットとデメリット
〇メリット
国の意思決定が非常にスムーズに進むため有能な独裁者が君臨した場合に、国家が大幅に発展する事もあります。
戦後の東アジアや東南アジアでは開発独裁と呼ばれて称されました。
アフリカの国、ルワンダの5代大統領は犯罪率を東京レベルまでに下げ、女性国会議員を30%以上という規定を設けて、女性の政治参加を促しました。
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国大統領のヨシップ・ブロズ・チトーは独裁によって平和を実現し、民衆の意思が尊重される社会を作りました。
アラブ首長国連邦は豊富な資源もその要因ですが、所得税を0%にして医療費も無料にしています。国民の幸福度は世界28位と高順位です。
〇デメリット
独裁体制下では、独裁政治を批判する事は許されておらず個人の自由権は厳しく制限されます。
国家にの政治に反対する者は排除される傾向にあり、国が豊かで経済が順調に進んでいる時は国民の幸福度も高いですが、
為政者が権力行使に歯止めがきかず、私利私欲に走ったり国の方向性を失った時に国家として衰退する事があります。
ブータンでは国民の幸福度が高く国民が独裁政治を望んでいましたが、国王が代わり、もし悪しき君主があらわれたらどうするのか?と、国王自らが民主化を進めました。
先に挙げたユーゴスラビアでは、大統領ヨシップ・ブロズ・チトーの死後、紛争が勃発してしまいました。
良き独裁体制では国民は幸福度を得られますが、悪しき独裁体制では自由を激しく奪われてしまうのです。

独裁政治と専制政治の違い
専制政治とは?
個人が圧倒的な権力を持って政治を恣意的に行う体制。
専制政治の場合は、統治する側とされる側に明確な身分の違いがあります。
支配する側とされる側に分かれていて、支配される側は政治に参加できないのが専制政治の特徴です。
市民革命前の中世ヨーロッパや江戸時代の日本などが専制政治の例ですね。
それに対してナチスのヒトラーに代表されるように民主主義の国であっても選挙で国民の大多数によって選ばれて権力を与えられた独裁者も存在するため、
独裁政治と専制政治の違いは明確かと思います。
独裁政治では統治者と被統治者に身分の違いはないですからね。

まとめ
この記事では独裁政治について解説しました。
独裁政治は民主主義や社会主義に関係なく、個人または特定の集団や階級に権力が集中することで、社会の転換期にあらわれることが多い政治体制です。
現代の世界でも独裁政治は存在します。
為政者が強いリーダーシップを発揮して国政をスムーズに運営できるため、素晴らしい独裁者の場合は国は幸せになることもあり、
悪しき独裁者の場合は国は方向性を失うこともあるのが、独裁政治の仕組みです。