この記事では開発独裁について解説します。
独裁政治と聞くとかつてのドイツやイタリア、日本の独裁政治を思い浮かべてしまうかと思いますが
実は独裁政治にもリーダーシップを発揮しやすく意思決定がスムーズに進むなどのメリットがあります。
今回は独裁政治のメリットを活用した開発独裁について解説します。
独裁政治のメリットとデメリットに関しては『独裁政治とは?独裁政治のメリットとデメリットと専制政治との違い。』の記事をご覧ください。
開発独裁とは?
経済開発を名目にして、軍事政権や一党独裁により議会制民主主義制度を否定もしくは形骸化させた強権的独裁政治
開発独裁は経済開発、主に工業化を理由として議会制民主主義のプロセスを経ずに
意思決定を推し進めることです。
特に第二次世界大戦後の発展途上国で見られました。
貧困から脱却するためには工業化の推進が必要であるという国民の声が背景となり、
工業化を第一優先事項とした場合に、工業化に反対のグループの意見も取り入れて議論を進めていくと物事が前に進むのに時間がかかってしまいます。
そこで、経済発展のためには政治的安定が必要という立場から
国民の政治参加を著しく抑制して、独裁的に経済開発を進めていくのが開発独裁なのです。
1980年代に飛躍的な経済成長を遂げたNIES諸国のなかにも開発独裁の形態を取った国が多数ありました。
1970年以降は経済も発展して、開発独裁に対する批判の声も高まり1990年に入ると開発独裁は消滅しました。

開発独裁の例
開発独裁は主に軍事政権や一党独裁政権によって行われました。
〇インドネシア
1868年に就任したスハルト大統領は冷戦時代のアジアに広がった開発独裁の典型でした。
スハルトは反共産主義に転じて、東西冷戦下でアメリカ・イギリスなどの西側諸国の仲間入りを果たした人物です。
スハルトは国民の自由や文化を抑制しつつ、国軍と官僚が主導で開発独裁を行いました。
インドネシアは原油が豊富に取れる資源国でしたが、原油にばかり産業が依存すると、世界の原油価格の変動で景気が浮き沈むするという問題を抱えていました。
そこで一気に工業化を推し進め原油以外の産業にて輸出を推奨する経済政策を取りました。
〇韓国
韓国の朴正煕大統領も開発独裁を行いました。
朴正煕は軍事政権を樹立して、反共産主義の独裁政権を築きました。
開発独裁の下で、低賃金を維持しながら外国企業を積極的に誘致して輸出向けの工業製品を生産するという経済政策を取りました。
韓国の開発独裁は台湾、シンガポール南米の国々でモデルとされました。
韓国の開発独裁はベトナム戦争の特需もあり成功をおさめますが、政権と関わりの深い財閥を急成長させるという側面もありました。
開発独裁は経済開発による国民経済の向上を掲げたために突如として国民からの支持を得ました。
しかし、実体は開発優先政策は一部の企業や財閥、外国資本などとの癒着を助長して、特権階級だけが儲かるという構図も生み出したのです。韓国の財閥が良い例と言えるでしょう。
大部分の国民には利益が還元されずに低賃金などでかえって国民生活が苦しくなるという例もありました。

まとめ
この記事では開発独裁について解説しました。
開発独裁とは主に工業化による経済開発を推進するという最優先事項を達成するために独裁政治を行うことです。
議会民主主義を否定したり、あったとしても形だけのものになります。
第二次世界大戦後の新興国に良く見られ、インドネシアや韓国などが開発独裁の例です。
しかし、政府と関係のある特定の企業や財閥などの特権階級に恩恵が集中して国民には利益が分配されないという結果でした。
国としてはGDPは劇的に向上しました。