この記事では交戦権と交戦権の否認について解説します。
平和主義は日本国憲法の大きな特色の1つとなっています。憲法の前文と憲法9条にて平和主義を規定していますが、
憲法9条は「国権の発動たる戦争」の永久放棄を戦力不保持及び国の交戦権の否認と一体として定めています。
今回はそもそも交戦権とは何か?そして交戦権の否認とはどういった意味合いなのか?について解説します。
憲法9条に関しては、『憲法9条とは?わかりやすく解説。改正や自衛隊の解釈について。』の記事をご覧ください。
交戦権とは?
国家が戦争を行う権利。または交戦国が戦争を遂行する上で認められている国際法上の権利のこと。
交戦とは事実上戦争を行っている状態のことを差していて、
国家同士だけではなく、国の内部での紛争も交戦に分類されています。
交戦は必ずしも宣戦布告を条件とはしていません。宣戦布告とは国家が戦争を起こしたい相手国に対して、戦争行為を開始する意思表示をするものです。
朝鮮戦争やベトナム戦争などの冷戦時の代理戦争では、宣戦布告を行わずに交戦状態となりました。
つまり、交戦権とはその名の通り「戦争を行う権利」と言えます。
国際法上、原則として戦争は違法とされています。
戦時国際法では、「軍事的必要性」や「人道性」の原則があります。
例えば、ある国で著しく国家が人権を侵害するような行為をしている場合に、他国が「人道的介入」という事で武力行使をする事がなどがあるわけです。
もしくは国際法上、限定的に可能なのは「自衛権」としての武力行使です。
つまり、「戦争を行う権利」を規定しているのは世界中どこを見渡してもないわけであり、
交戦権という言葉には厳密な定義は存在していないのです。
憲法9条を制定するにあたり、日本が戦争を行わないためにマッカーサーノートにて、「交戦権の否認」が明記されるような背景がありました。

交戦権の否認とは?
国家が戦争を行う権利を認めないこと。憲法第9条2項に示されている。
先ほどの交戦権の解説の続きになりますが、
日本の憲法9条第2項では、国際法上の要請を確認しているという事になっています。
国際法上、戦争を行う権利はどの国にもないわけであって、日本の場合は平和主義の観点から
憲法に交戦権を否認することを明記しているという事です。
防衛省は交戦権と自衛権を別物として捉えています。
防衛白書では、交戦権を
「戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」であり、「相手国兵力の殺傷と破壊、相手国の領土の占領などの権能を含むもの」
と、しています。
一方の自衛権の行使に関しては、わが国を守るために「必要最小限度」の実力を行使することは当然の事として認められていると解釈しています。
そういった意味では相手国を占領したり、自ら攻撃する事はできないという事です。
最近では自衛権の範囲が問題になっています。
自衛のために、自国や自国の公海、公空を守るだけであれば、問題はないように思えますが、
外国の基地や同盟国に加担して相手国にて戦争を行う行為、つまり集団的自衛権の問題が交戦権の否認と相反するのではないか?という指摘があるわけです。

まとめ
この記事では交戦権と交戦権の否認について解説しました。
交戦権とは国家が戦争を行う権利です。しかし、国際法上、国家が戦争を行う事は違法であり、自衛のための戦争や人道的介入のみ武力行使が許されていると認識されています。
交戦権の否認とはその名の通り、国家が戦争を行う権利を認めないことで、憲法9条第2項に規定されています。